【LUXMAN】5M21 紆余曲折あり修理完了!【3回目】

2021/06/19

5M21 AB級 LUXMAN アンプ

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 どうも。文章を書くたびに文章力/語彙力の無さを痛感しています。
会社でもそうですが私が10話して伝わらない話を上司は1話して伝えてくれます。
すごいですねぇ・・・

さてさて、前回オフセットのふらつきを解決し、あとはバイアス(Bias)調整で終わり!
の予定でした。しかし・・・

1.1時間ほど暖気するとDCオフセットが10[mV]ほど急変する現象発生
2.終段パワトラのコレクタの様子がおかしい
3.バイアス調整の方法がわからない

の三本立てで思わぬ時間を食ってしまいました。上記を解決し本日5時間の連続運転でも問題が無かったのでこれでとりあえずは修理完了とします。では1~3を追って報告します!

1.DCオフセット急変再来
前回初段のDML-01のuPA63Hを交換し、電源投入直後から±100[mV]でふらついていた現象は解決しましたが1時間ほど暖気すると±10[mV]程度で片chがふらつくようになりました。
その後もしばらく放置しましたがそれで症状固定でした。結局DML-01の2SC1775Aが原因でした。ということで初段の1段目は全素子交換となりました。残念!
左が不調な2SC1775A、右が手持ちの2SC2240。Vbeがばっちりそろったペアです。hFEは1%程さがありますがカレントミラーはVbeが大切だと思いますので。

原因が違ったらいやなので仮付けです。本番は左のように実装しにくい場所なんですよねぇ・・

結果、この交換で症状は治まり、5時間の連続運転でも問題なしでした!

2.終段パワトラのコレクタの様子がおかしい
 百聞は一見に如かずということで写真をご覧ください。

終段のSEPPは2パラ構成なので上下アームのトランジスタはそれぞれコレクタが共通=抵抗が0[Ω]になるはずなのですがなぜか写真の一番右のトランジスタだけ1.3k[Ω]もあります。

パラレルなので1つのトランジスタが正常であれば波形的には正常に見えてしまうため気が付きませんでした。
ではなぜ気が付けたかといいますと、この後のバイアス調整の下調べで判明したのです。詳細は次のバイアス調整をご覧ください。

で、コレクタが共通の回路図的な意味を説明すると
Pioneer M22の終段

ここの赤丸の部分の事です。回路図を見ると明らかですがここに抵抗は存在しません。
(線材の抵抗が~ネジの抵抗が~という細かい話は置いておいてくださいね)

他のトランジスタペアはこのように0[Ω]です。

一番右のトランジスタや終段の基板を少し押すと抵抗値に変化があります。トランジスタソケットか何かの接触不良のようですので終段とヒートシンクをばらしてみることにしました。これがまたタイヘンで^^;;;;;;;

まず終段基板を取り出すのですが、基板はヒートシンクにトランジスタ固定用のネジでトランジスタと共締めされているためトランジスタのネジを外します。
気つける必要があるのが・・・
ここに裏側から温度補償兼バイアス生成用の中電力トランジスタが固定されていますので、先にこれを外します。

先に2SA747A/2SC1116Aを外してしまうと基板の全重量をこのトランジスタが背負うことになり間違いなく足がモゲルかパターンがはがれてしまうでしょう。
で、どのようにこのネジを外すのかというと・・・
この基板の裏側の基板を外さなければなりません/(^o^)\
知恵の輪ですねorz
2か所あり、一つは出力基板を外してアクセスできるここの穴の先

同様に残り一つは初段基板を外してアクセスできるここの穴の先です

あとは2SA747A/2SC1116Aを取り外せば基板がフリーになります。
取り外す前に同じ場所に戻せるようにシールで番号をふっておきます

グリスがかなり薄いのですがとてもねばねばしています。使いやすそうなグリスですねぇ

グリスはAB級だからかかなり薄めに塗布されているかもしれませんね。正直発熱的にはなくてもいいくらいです。
トランジスタをすべて抜いた後、ヒートシンクを外します。ヒートシンクは下記3か所、左右で計6か所のネジを抜けば外れます。




ヒートシンクが外れた状態

ヒートシンクが外れると、サーミスタが現れるので外してやります。これでヒートシンクが完全にフリーになります。

サーミスタは2本のネジで留まっています。

ヒートシンクが完全にフリーになりました。積層のかっちょいいヒートシンクですね(*'▽')

本題を忘れてしまいそうになりますが、目的は終段トランジスタのコレクタ-コレクタ間の抵抗の原因探しです。

ようやく終段基板があらわになりました・・・

様子がおかしいトランジスタソケットの根元をよく見てみると・・・

ソケットと基板の接続部を見ると見事な半田クラックが発生していますね!
この基板を本体(ヒートシンク)に固定する部分はこのソケットしかありませんのでそりゃ負荷がどうしたってかかってしまいますよねぇ。基板表面まで穴が貫通しておりハトメに半田付けできる構造なので全てのソケットとトランジスタを再半田しておきました。

これで2の目的は達成したのですが、せっかくばらしたので諸々を掃除ておきます。

六角のネジを外すと・・・

ヒートシンクがばらばらになりますので全て除菌も出来るジョイ君できれいにしておきました

組み立ておおしました。ピカピカ!!

トランジスタも全てIPA磨きました(左:After)

マイカ板も全てIPAで洗浄しました。

そしてかなり薄くグリスを塗り直します。(マイカ板の裏表)

ネジは全てパーツクリーナで脱脂しています。このねじは単なるネジではなく線材(コレクタを基板(ソケット)に接続する目的)ですのでしっかり脱脂し抵抗を下げおきます。

ついでなので安物チェッカでhFEとVbeを測定しておきました

パラレルをなす素子同士で電力偏りが起きないようにするにはhFEを合わせるよりVbeを合わせる方が重要です。測定結果からもその考えが見て取れますね。
(hFEを合わせる場合は上下ペアのhFE、Vbeを合わせる場合はパラレルペアのVbeを合わせます)
いや、まぁ、Vbeはそんなばらつくパラメータではありませんし、エミッタ抵抗で負帰還かかるので厳密に揃えなくても終段として十分動作しますが。

測定結果
Tr番号(上下ペア)
{パラレルペア}
hFE Vbe[mV]
1(3){2} 80 547
2(4){1} 63 544
3(1){4} 97 575
4(2){3} 101 560
5(6){7} 92 559
6(5){8} 87 566
7(8){5} 40 554
8(7){6} 51 549

ようやく2の説明が終わりました・・・

3.バイアス調整の方法がわからない
 さて!ようやく今回の本題のBias調整です!
サービスマニュアル(SM)の調整手順を読んでみると・・・

1.電流を150[mA]にセットし5分くらい放置
2.DCオフセットを0にセットし5分くらい放置
3.電流を140[mA]にセットし5分くらい放置
4.DCオフセットを0にセットし5分くらい放置

と記載されていました。ほうほう・・・よくあるのはエミッタ-エミッタ間電圧を調整するのですがLuxmanは電流なのか・・・ほうほう・・・

( ^ω^)・・・

で、どこの電流????
これがわからんのですorz
で、海外のフォーラムでも同様の質問がありました。
QA1QA2を読み余計に混乱しました。(クリックすると海外サイトにジャンプします。ご注意を)

どのように混乱したかというと1と2の調整方法が異なり、かつ、両者に等価性が無いのですorz

1はSM通り電流を140[mA]に合わせる方法で、電流計は基板上のジャンパ線を切断し挿入するとのこと。
2は終段トランジスタとエミッタ抵抗の電圧で合わせる方法(よくあるやつ)です。パラレルなので140/2=70[mA]になるようエミッタ抵抗両端電圧を13.5[mV]に調整する方法です。

QA1で説明されている電流計でQA2で説明されている2パラの合計電流を測定できれば両者は等価な回答なのです。図で示したほうがはやいですね。


で、冒頭で述べた通りこの二つは等価ではありませんでした。まずジャンパ線の写真をご覧ください。

QA1によればここのジャンパ線をカットし電流計を挿入します



拡大するとこんな感じです

アンプの作りを考えると測定ポイントはここで間違いなさそうです。実際に修理をした人にはわかる確からしさがあります。で、ポイントはここの電流は何かという点です。実際に基板のパターンを追いかけて確かめたところ、どこかといいますと・・・
実は正規(QA1)の電流とはバイアス回路も含めた電流の事でした!これを突き止める過程で2のコレクタにおかしな抵抗があることに気が付けました!

はい。くどくなりましたがSMの140[mA]とはバイアス回路も含めた電流の事だったようです。
つまりQA2の方法では流しすぎということです。
このバイアス回路はトランジスタ型バイアス回路だけでなく、5M20/21の特徴である定電流回路とA級エミッタフォロア回路なども含まれていますのでQA2は相当な流しすぎになると思います。回路図から厳密に計算すれば導出できますが別に得るものはありませんので先に進みます。


さて、前置きが長くなりましたがようやくバイアス調整に入ります。
左右のジャンパ線をカットして・・・
テスタを電流モードで接続し~の~
電源ON! バッテリーが・・・

140[mA]に対して1.5倍程度流れておりますが両chとも等しい値のため狙って合わせてある可能性があります。正直これだけ立派なヒートシンクがあるのでチ〇チ〇に熱くなるくらいバイアスをかけてあげても大丈夫だと思います。が、オーバーオールでNFBをかけた差動アンプのため、素子の寿命と天秤にかけると無駄かなと思います。クロスオーバー歪は差動増幅でほぼ消えてしまうのでバイアスを無理に上げる必要はないはずです。ただし、トランジスタのノイズ特性はコレクタ電流を流すほど改善しますし、動作点を線形領域方向に移動させるという意味ではバイアスをしっかりかけるのもありです。
(自分のM-22不要論になりそうだったので念のためフォロー)

ということでバイアスを調整

手順道理何度かに分け調整を行い、2時間放置した結果がこちらです。
バイアス電流

DCオフセット

問題ないですね!
そして翌日(本日いや、さきほど日をまたいだので昨日、いやいや、どうでもいい)に5時間ほど連続運転しましたが問題なしです。

自分のM-22が調子悪いんじゃないかってくらい5M21の音が素晴らしかったのでめちゃくちゃ悔しい思いと共に、私も欲しくてたまらなくなりました・・・

以上!
状態が抜群にいいアンプでしたので3日で完了してしまいましたがいかがでしたでしょうか!
依頼者の方に喜んでもらえるといいなぁと楽しみです。

それでは5M21の修理投稿を完了したいと思います!ありがとうございました!
(また何かしらで投稿する機会があるかもです)

(2021/08/26追記:修理完了ならず・・・ こちらから続きをご覧ください)

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モノ作りが好きです。GUIアプリの作成からアナログ回路まで手当たり次第です。 アンプの修理を紹介するためにブログを始めました。 (Twitter:@TakaElc)

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