【自作】ミニM-22の自作 初段の設計【3回目】

2022/06/04

A級 アンプ 自作アンプ 電子工作

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M-22の修理依頼を受け取りましたので自作アンプの投稿を急いで完了させます!
ケーシング手前まではすでに完成しているためそこまでは投稿を終わらせたいです・・・

さて、今回は初段の設計を行います!
初段はLuxman 5M21の修理でも登場したuPA68HAを使用したJFETの差動+カレントミラー方式です。

それでは行ってみよ~!

初段の設計

基本構成

 M-22は2SA798を用いたBPTの差動方式です。BPTはどうしてもバイアス電流が流れるためカップリングコンデンサが必要です。カップリングはどうしても音への影響が大きくアンプの純粋な評価がしにくいためDCアンプとしたいのは常にある思いです。M-22もカップリングレスの改造を考えているくらいです。(まぁそれをやってしまうとM-22ではなくなるんですが)
 カップリングを取り払うには流入電流を極限まで減らしバイアスを0に近づける必要がありますがそのときに有効なのがFETです。ゲートには原理上は電流が流れ込まないため入力インピーダンスが非常に高くバイアスが不要でカップリングをなくすことが出来ます。


こちらが設計した回路です。よくある差動+カレントミラー+定電流源の構成です。
差動増幅の負荷にカレントミラー(一種の定電流源)を設けると、エミッタ接地と同じく電圧利得が非常に高くなります。負帰還アンプなので系全体の利得は高いほどいいです。なのでこのような構成を取っています。

定電流源($Q_4,R_4$)の設計

流れは、まず定電流源($Q_4,R_4$)を設計し動作点($R_{1,2}$)、利得($R_{6,5}$)、DCオフセット調整回路を設計します。

定電流源の電流値は、$Q_5$の$I_b$を無視できる値を流してやります。前回の投稿で$I_c=40[mA]$と設計しましたので$Q_{1,2}$のコレクタ電流は$10I_b=I_c/h_{FE}$より大体2[mA]程度は流せばよさそうです。
 

カレントミラーに2[mA]流すということは定電流源はその2倍の4[mA]程度流せばいいことになります。エミッタ接地の定電流源用基準電圧(D1)を初段でも流用し4[mA]に設定します。

$R_4=\frac{V_{D1}-V_{be}}{4*10^{-3}}≒1.5[kΩ]$

動作点($R_{1,2}$)の設計

$R_{1,2}$は差動増幅の動作点を決める抵抗です。$Q_5$のベース電位は$6+V_{be}$と定まっています。この関係を崩さないようにするには、$Q_1$のコレクタ電位ひいては$Q_{1,2}$のベース電位を$Q_5$のベース電位と等しくしてやればいいです。

(カレントミラーが定常状態であれば、$V_{c_{Q_1}}=V_{c_{Q_2}}=V_{b_{Q_{1,2}}}$となるからです。)
カレントミラー2[mA]とベース電位$6+V_{be}$が定まりましたので
$R_{1,2}=\frac{V_b-V_{be}}{2*10^{-3}}=\frac{6}{2*10^{-3}}=3[kΩ]$
となります。

利得($R_{6,5}$)の設計



$R_{6,5}$は非反転増幅回路の利得を決める抵抗であり教科書の通りです。

単なる非反転増幅回路です。

電圧利得は5倍としました。後述するDCオフセット調整回路の抵抗値との兼ね合いでキロオーダーとして選定しました。($A_v=1+\frac{R_5}{R_6}$)
$C_1$は位相補償用キャパシタで高周波の帰還量を増やし、ゲインを下げる目的があります。周波数が高くなると回路の遅延が無視できなくなり負帰還のはずが正帰還となってしまい発振します。その対策です。(負帰還増幅のごくごく一般的なものですのでオペアンプ等のキーワードで調べてみてください)

DCオフセット調整回路の設計

DCオフセット調整回路は負帰還を正/負のどちらかにDCオフセットさせる回路です。
これを行うことで負帰還回路の出力のDCオフセット量を0に調整します。
系全体のゲインが高く理想的な設計ができていれば不要なのですが、ディスクリートでこの規模の差動回路だとどうしてもオフセットが発生してしまいます。

オフセット調整回路

この調整回路はM-22を参考にしています。原理はとてもシンプルで、±0.65[V]の範囲($D_{2,3}の順方向電圧$)に制限し、かつ$R_8$でオフセットさせています。
$R_8$と先述のゲイン決定抵抗$R_{5,6}$は並列になりますのでお互いにオーダーを1桁くらいずらしておかないと、ゲインやオフセット幅の設計がずれます。
$R_{9,10}$はダイオードの順方向電圧を生成するための電流を制御するための抵抗です。
データシートから順方向の飽和電圧-電流特性を確認して決めるとよいでしょう。

以上でアンプ部分の設計が完了しました!

シミュレーション

手計算で設計を行いましたが念のためシミュレーションで動作確認です。


うまく動いていますね!

動作試験

設計した通りの部品を集め実装しました。
必要な部品です。

まだ説明していない回路のパーツも含みます

手持ちに無い部品は秋月で揃えました

結構な部品点数ですね(まだ説明していない電源やプロテクタも含みます)

終段のヒートシンクです。5[W]の発熱になりますのでこれじゃ全然足りないです。
仕方なくバイアスを落とすことにしました;;

Trをねじ止めするためのネジ穴をタップで切ります


カレントミラーを構成する2SA970のペア取りもやっておきました。
(ほとんどペアが作れなかった;;)

初段のuPA68Aです。この時のために数年前に購入したのですが
5M21の修理で先に使用しました!
数年越しの実現です。
ブレッドボードに仮組し動作チェックです。

DCオフセットも調整でき動作もOKですね!

実装

初の試みなのでPCBではなく手組です。手組の強い味方PasSを使いレイアウト&配線図を作成しました!
使い勝手がもう一つですが手組には強い味方です!

作成した基板がこちら。

初段の電源用にMUSEのKZを選択

終段のベース間をバイパスするキャパシタは東信をチョイス
昔カップリングに使用し好みではなかったので眠っていた

位相補償用キャパシタは高級WIMAをチョイス!
(これしか店に無く・・・
もったいない!)

さて動作はいかがでしょうか!
ばっちり発振気味ですね!(オイ

これは予想済みで基板実装も対策用にスペースを空けてあります。
エミッタ接地の入力にHPFを設け対策します。

参考書にはカット&トライで値を決めると書いてありましたが、
オシロにFFT機能がありますので周波数を特定し値を決定しました。
今回は3.5[MHz]の成分ですので数100[kHz]のフィルタになれば適当でいいです。
(カットオフをいくらに設定したか覚えていないだけ)

見事、発振も収まりました!

ブレッドボードで仮組しテスト用スピーカで確認です。
テスト用スピーカーを接続し正弦波を聞いた時は涙が出るほどうれしかったです!
(いい音とは言っていない)

今回は以上です!
次回は電源とプロテクタの設計かな?
乞うご期待!

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モノ作りが好きです。GUIアプリの作成からアナログ回路まで手当たり次第です。 アンプの修理を紹介するためにブログを始めました。 (Twitter:@TakaElc)

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